戦闘民族・鈴木優
超攻撃的選択と、
勝敗を分けた最後の一打
文・東川亮【曜担当ライター】2022年10月21日
英雄は、東海から来た。
最高位戦日本プロ麻雀協会史上ただ一人、地方から最高位を獲った男。
鈴木優。
力を見込まれ海賊団に迎えいれられた「戦闘民族」が、攻撃自慢の猛者がそろった一戦で、その真価を示す。
第2試合
東家:黒沢咲(TEAM雷電)
南家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
戦闘民族は声高らかに
「リーチ!」
その声は、過去の試合と比べてもひときわ大きく聞こえた。東1局に入った、ピンフ赤ドラのチャンス手。よどみないリーチ発声とモーションに、この試合に懸ける思いがにじむ。
「ツモ!」
気持ちのこもった声と反比例するかのように、そっとアガリ牌のを手元に置く。
リーチツモピンフドラ赤裏、3000-6000は、初トップの後押しとなる先制の一撃。
優は開幕戦デビューから3試合に出場していまだ勝利がなく、もちろん、この試合に勝ちたかった。しかしそれは、自分のためだけではない。快く送り出してくれるチームのため、応援してくれるファンのため、そして自分の活躍を信じてやまない、東海地方の家族や仲間のため。彼はいつだって、誰かの思いを背負っている。
自分らしく闘って、勝つ。自身の存在証明に、他の方法はない。
セレブ黒沢、悔恨の一打
東2局。
黒沢に大物手が入った。ドラと赤が合計4枚ある1シャンテン、黒沢は不要になったペンターツを、親のたろうが切ったばかりのから処理した。微差の安全度を考えての選択だったと思われる。何気ないターツの切り順に見えたが、これが思いも寄らぬドラマを生む。
次巡、がかぶった。から切っておけば、ここで雀頭ができてのタンヤオドラ3、赤、高目イーペーコーでダマテンでもハネ満という手だった。黒沢のため息が聞こえた気がした。
カンを仕掛けて一気通貫のテンパイを入れていた優が、をツモ切る。黒沢ならもしかしたらリーチをしていたかもしれないし、テンパイならをツモ切っていたので警戒されたかもしれないが、一つ目に見えて捉え損ねた牌となった。
この局は高宮がたろうから8000をアガって決着したが、たろうと同じか、それ以上に黒沢にとっては痛恨の一局になったと思われる。
東3局1本場では、切り遅れてリーチ宣言牌となったで優に放銃。
優は前局に続く5800の加点でリードを伸ばし、黒沢は事実上、この試合のトップ戦線から脱落した。
小技も冴える鈴木優
東3局2本場、優は仕掛けを2つ入れるも、そこに被せてきたたろうのリーチに対してオリに回っていた。最終手番、現物を切ればテンパイできる可能性があったが、暗刻のを1枚外す。生牌であり、単騎には当たる可能性のある牌だが、これは通過。
直後、高宮がツモ切ったを・・・
ポン。
この鳴きで、たろうに回るはずのハイテイを消した。生牌の字牌暗刻を切れば、今まで他者が切れずに抱えていた牌を切れるようになり、合わせられた牌を鳴いてツモ番を変える、という技。チーでハイテイをずらす、カンでハイテイを消すというのはよくある技術だが、その応用編である。鈴木優、今宵は小技も冴えている。
なお、優はフーロの際、牌を横に寄せる前に手を上げて牌を見せ、打牌を行っている。同じチームの小林剛が実践している所作だが、これは見る側にとってはありがたい。
(キャプチャを撮る観戦記ライターとしてはもっとありがたい)
牙をむく戦闘民族
南1局、先制は高宮。一手変わりツモり四暗刻だが、局も中盤で欲しい牌はど真ん中ということで、ここは変化よりも現状のテンパイを重視してリーチをかけた。ツモなら満貫スタートと、打点も期待できる。
そこへ、優も追いつく。を切ればドラドライーペーコーでダマテンでも出アガリ5200とそこそこの手。ただ、ドラまたぎで当たれば安くない失点を喫する可能性もある。もちろん、中スジのや2枚あるなど、比較的安全そうな牌を切る選択もあった。だが、